「まほうのえのぐ」 林明子 作・絵 (福音館書店) 1997
先日、授業の時間が余って、「これ、よんで」と子供たちに乞われて本書を読みました。
最初、断りました。ストーリーもので、文章も日本語学習を始めたばかりの子には理解できません。日本語レベルがバラバラの子達が同席しているときだったので、
「この本は駄目だ。(来日したばかりの)Aさん達には難しいから」
と言ったのですが、一年半日本にいるBさんに、
「わたしも、(来日したばかりの)ようちえんのとき、わからないけど、きいてた」
などと抗弁され、まあ、そんなに複雑なストーリーではないし、色の名前や動物の名前は、Aさん達も多くが学習済みだったので、なんとかなるかなと思い直して読みました。
本に書かれている文章はなるべくシンプルな日本語に変え、「行きます(行きました)」「森に入りました(入りました)」「声が聞こえます(聞こえました)」など、子供らの既習単語や推測可能な表現を強調・補充しながら読みました。
文章の中に、"とかげ" が登場してきて、
「あれ? とかげ、どこいる?」
ととぼけて訊くと、学習期間の長い子が、
「ここ! ここ!」
と教えてくれ、それで語彙の乏しい子も、"とかげ" を覚えたりすることができました。
そんなこんなで、なんとか絵にも助けられ、ごく初級レベルのAさん達も楽しめ、ストーリーを追えたようでした。
オチもはっきりしており、助かりました。
ちょうど読み終えたときにチャイムが鳴って、
「はい、では授業を終わります」
ときれいに終わらせることができた次第です。