子どもの日本語教育におすすめの絵本を紹介するブログ

外国人散在地域で外国人児童に日本語を教えている日本語教師です。私の備忘録も兼ねていますが、プロアマ問わず同じ活動をされている方と情報交換もできたらと思います。

ジャングルジムをつくろう!

『ジャングルジムをつくろう!』 三浦太郎 作 (ほるぷ出版) 2020

 

ジャングルジムをつくろう!

 

子供達が積み木のように四角を積み上げて、スイカや車の形のジャングルジムを作り上げます。

子供が一人ずつ増えていくので、「一人、二人、三人……」と人の数え方を学習した後、飽きっぽい子や忘れっぽい子に念押しするのにお勧めです。

当てっこクイズが好きな子供は多いので、ジャングルジムが出来上がったページの文章を隠して、

「これはなに?」

とこちらが尋ねると、

「すいか!」

「くるま!」

など、元気よく答えてくれます。

ひと目でわかる! 教室で使うみんなのことば

『ひと目でわかる! 教室で使うみんなのことば』(文研出版) 2017~2018

 

 

シリーズものです。

1.「あいさつやこまったとき」

2.「学校の一日」

3.「国語・社会・体育・音楽・図工」

4.「算数・理科・家庭科・道徳ほか」

5.「季節と学校の行事」

の全5巻です。

本の学校生活を始めたばかりの、外国人児童や帰国子女のための本で、英語・中国語・ポルトガル語・フィリピノ語が併記されています。

和式トイレの使い方や、各教科の学習内容や、学用品、校内の各施設、様々な教育活動などを絵で分かりやすく教えてくれるので、上記の言語以外が母語の子供にも充分使えます。

言葉がほとんど通じない子供を学校へ迎えたときに、非常に便利なシリーズです。

 

※英語・韓国朝鮮語スペイン語ベトナム語併記のものもあるようです。↓

 

どっちがピンチ?

『どっちがピンチ?』 いわいとしお 著 (紀伊國屋書店) 2006

 

 

”ピンチ”という言葉がまずあまり初期で習わない単語なので、本書を読み聞かせる前に絵カード等で「危ないことの意である」と伝えた方が良さそうです。私は、『大ピンチずかん』(小学館)がちょうどそのとき手元にあったので、絵カードのかわりにそちらをペラペラめくって見せて、「こういうのが”ピンチ”だよ」と事前に伝えました。

上の表紙の画像にあるように、『どっちがピンチ?』は、似ているけれども少しだけ違いのある二つのシチュエーションが描かれていて、読み聞かせる側が子供へ見せて、「どっちがピンチ?」と尋ねる形の絵本です。

どっちか子供に答えてもらったら、「どうして?」と聞くと、子供が頭を巡らせて、既習単語や文型を使ってなんとか理由を説明しようと頑張ってくれます。「水が落ちる」など、ちょっと誤った表現をしたときは、「そうだね。水がこぼれるから、ね」と、さりげなく修正して、子供により良い表現を伝えられます。口数の少ない子にも、自然に楽しくフリートークを促せる本です。

ただ、小さい本なので、同時に読み聞かせるには子供三人ぐらいが限界かもれません。

 

同著者の、『どっちがへん?』も同様の切り口で、おすすめです。

 

 

かさ かしてあげる

『かさ かしてあげる』 こいでやすこ 作 (福音館書店) 2002

 

 

雨が降り出しました。ある女の子が、傘がなくて困っています。そこへ、いろんな動物が「傘かしてあげる」と声をかけてくれるお話です。

アリの傘は小さすぎたり、ウサギの傘は雨漏りしたり、クマの傘は重すぎたりしますが、それが楽しいところで、読み聞かせていると子供がすかさず「(傘が)小さい!」「(傘が)ニンジンだよ!」などとツッコミを入れてくれます。

ごく初期の学習段階で読み聞かせることができますが、授受表現の「~てあげる」を教える際に、もう一度使えます。

しりとりのだいすきなおうさま

『しりとりのだいすきなおうさま』 中村翔子 作/はたこうしろう 絵 (鈴木出版) 2001

 

しりとりの だいすきな おうさま

 

日本語の授業の時間が半端に余ったときなど、ゲームをすることがあります。しりとりもその一つです。たかがしりとりですが、外国人の子供は大喜びして盛り上がります。

しりとりをした後、この本を読んであげたりするといいかもしれません。しりとりが大好きで、食事のメニューもしりとり順に並んでいないと気が済まない王様のお話です。

ゲラゲラ笑ったり、びっくりしたりする内容ではないので、読み聞かせの最中は反応はちょっと薄いかもしれませんが、ストーリーは分かりやすく、殊に実際にしりとりで遊んだ後は印象に残る本です。

後日、自分で本を引っ張り出してきて再読する子も少なくないです。

 

くるま はこびます

『くるま はこびます』 小風さち 文/鈴木周作 絵 (福音館書店) 2013

 

 

キャリアカーは数台の車を一度に運ぶことのできる大きな車です。

本書では、中古車センターにやって来て、中古車6台を慎重に積み込み、運んでいく様子が描かれています。

子供も、日常生活でこういった大きな車に出くわすことはありますが、積み込む様子はなかなかお目に掛かれないので、興味を持って聞いてくれます。

平易な文章なので、日本語初中級の子供にお勧めです。

オノマトペはちょっと独特なので、私は初めての読み聞かせのとき、少々つっかえてしまいました。忙しいとつい、事前の練習を怠ってしまいます。反省。

よく見て! 目のトリック 錯視・錯覚

『よく見て! 目のトリック 錯視・錯覚』 曽木誠 監修/市村均 文/伊東浩司 絵 (岩崎書店) 2016

 

よく見て! 目のトリック

 

『ウソ? ホント? トリックを見やぶれ』というシリーズの第一巻です。

 

同じ大きさのクッキーが二つあります。一方のクッキーは大きいお皿に入れてあります。もう一つのクッキーは小さいお皿に入れてあります。すると、前者のクッキーは実際より小さく見え、後者のクッキーは大きく見えます。

こういった、錯視が起こる事例がたくさん紹介されており、楽しみながら「長い」「短い」「大きい」「小さい」など、学んだ語句を使って教師や学習仲間とコミュニケーションがとれます。また、「同じ」「違う」という単語も覚えられます。

本書では、どうして錯視が起こるのか理由も分かりやすく解説してくれているので、ある程度日本語が話せる子に「どうして?」と尋ねられた場合に、簡単に説明してやることもできます。

日本語がごく初級の子と中級の子が、一緒に楽しめる本です。

ただ、幼稚園を上がったばかりの初級の子の場合は、錯視図を使っての日本語学習は混乱するだけかもしれません。子供の発達段階を見極めて使った方が良さそうです。