子どもの日本語教育におすすめの絵本を紹介するブログ

外国人散在地域で外国人児童に日本語を教えている日本語教師です。私の備忘録も兼ねていますが、プロアマ問わず同じ活動をされている方と情報交換もできたらと思います。

光の旅 かげの旅

『光の旅 かげの旅』 アン・ジョナリス 作・絵/内海まお 訳 (評論社) 1984

 

光の旅 かげの旅

 

ご覧のように、表紙をそのまま見ると明るい空をバックに並ぶ家々。ひっくり返してみると、夜空の下に同じく並ぶ家々です。

明け方の我が家を出発するところから、物語は始まります。家を出て、街へと向かいます。畑を過ぎ、山の中や海辺を通り、街へ着いて、駐車場に車を停め、映画を見て、ビルを上から見下ろし、夜を迎えたところで、本は最終ページです。

あれ、これで終わり?

と思いきや、本をひっくり返して、まだ物語は続きます。街に明かりが灯ります。地上に降りてビルを下から見上げ、レストランで食事して、駐車場から車を出して、高速道路の下や工場街を通り過ぎ、それから……。

 

本をひっくり返すことで、往路で最初に見たページが、復路ではすべて違う光景となって見えてくるので、子供が目を丸くします。

けれども、モノトーンで渋い作風なので、低学年は反応が薄いですね。中学年、高学年向けかもしれません。

 

言葉図鑑 9 しっぽのことば

『言葉図鑑 9 しっぽのことば』

 

 

先日、言葉図鑑シリーズから7巻をこのブログで取り上げましたが、9巻も便利なのでご紹介。

 

サーカスの団員や動物、観客の様子が可愛らしく、ユーモラスに描かれている本です。絵を楽しみながら、多様な文型が学べます。

例えば、「…れる …られる」のページには、大玉の上で落とされそうな団員と、大玉の下で落とそうとする団員が描かれています。

またその近くには、スティルト(西洋竹馬)に乗って倒れそうな団員と、彼を倒そうとする団員がいます。

また、馬に乗った団員や、観客の帽子を取った猿なども描かれています。

指しながら、「落とす・落とされる」「倒す・倒される」「乗る・乗られる」「取る・取られる」など子供に言ってあげると、子供も分かりやすいようで、すぐ頷いてくれます。

同様に、「…たい」のページ、「…せる させる」のページ、「…ない」のページなど、多様な「しっぽのことば(助動詞)」が描かれていて、一冊あれば、多くの単元で使え、非常に使い勝手がよいです。

てんてんきょうだい

『てんてんきょうだい』 田口慶太 著/田口麻由 絵 (ポプラ社) 2023

 

 

どんな言葉にも“てんてん(濁点)”を付けたがる、てんてん兄弟のお話です。

まずは「か(蚊)」です。

「か」に“てんてん”を付けたら、「が(蛾)」ですね。

同じ調子で、「はね(羽)」は「バネ」、「おうし(牡牛)」は「おうじ(王子)」へと変わります。

蚊や蛾など、絵は添えてあるので、まだ三か月ぐらいの初期学習の子にも説明は要りません。

てんてん兄弟の言葉遣いは、やたら濁点の付いた不正確なものです。それでは初期の子には分かりづらいんじゃないかと思うかもしれませんが、勢いで読んで大丈夫です。だみ声で読むと、更にげらげら笑ってくれます。

なりました

『なりました』 内田麟太郎 作/山口マオ 絵 (鈴木出版) 2004

 

カバが花の匂いを嗅いだ後、ゾウになったり、なめくじが家を造った後、カタツムリになったりします。

「あれあれ 〇〇になりました」のフレーズが繰り返されます。

「なります」「なりました」は、なかなかすぐには身につかないので、初期学習者におすすめです。

匂いを嗅ぐ際の「くん くん くん」や家を造るために釘を打つ際の「とん とん とん」などのオノマトペも、子供の印象に残るよう読みたいところです。

 

※残念ながら、表紙画像は見付かりませんでした。

 

ぐう ぐう ぐう

『ぐう ぐう ぐう』 五味太郎 作・絵 (文化出版局) 1982

 

 

ずっと寝ているクジラのお話です。

夜が明けても、ぐうぐうぐう。

友達が来ても、ぐうぐうぐう。

恐いの(サメ)が来ても、ぐうぐうぐう。

「~ても ぐうぐうぐう」のフレーズがずっと続くので、読み聞かせていると、後半は子供も一緒になって、歌うように読んでくれたりします。

「~ても」の文型を教えた後に、お勧めです。

 

言葉図鑑 7 たとえのことば

『言葉図鑑 7 たとえのことば』 五味太郎 監修・制作 (偕成社) 1987

 

 

『言葉図鑑』は全10巻あるようです。このシリーズは、『絵本でおしえるにほんご』(スリーエーネットワーク刊)でも紹介されているのですが、一冊一冊については記載がないので、このブログでも取り上げたいと思います。

 

『7巻 たとえのことば』は、「~みたいな・みたいに」「~のような・のように」の文型を教える際にお勧めです。

冒頭には、「にんげんのようなライオン」として、コーヒーを飲みながら新聞を読んでくつろいでいるライオンが描かれています。次のページは、「ねこみたいなライオン」として、ねずみを追うライオンのイラストです。

「~のようなライオン」「~みたいなライオン」の表現はそれぞれこの一度だけで、その後は、「~ににているライオン」「~的なライオン」「~まがいのライオン」など、異なる譬えの表現が続々登場しますが、そこは割愛して、子供達にはイラストだけ見せ、

「これは? どんなライオン?」

と訊くと、「~みたい」の表現を日本の学校生活ですでに聞き覚えている子がまず、

「カエルみたい!」

などと答えてくれます。

「そうだね、カエルみたいなライオンだね」

と応じると、その後の問いかけには、いろんな子が、

「ソファみたいなライオン!」

「木みたいなライオン!」

と先を争って答えてくれます。

子供達の中には、「~みたい」の表現に初めて接する子もいたりしますが、一連のやりとりで、どういう意味かすぐに察してくれます。

この手順で「~みたいな・みたいに」を教えた後は、同じ伝で「~のような・のように」を教えられます。

絵がユニークなので、「ブタっぽいライオン」のイラストなど、けたけた笑ってくれ、授業が楽しくスムーズに進むこと請け合いです。

これ あな

『これ あな』 みやにしたつや 作・絵 (鈴木出版) 2017

 

これ あな

 

いろんな穴が出てきます。

蜂の巣や、火山の火口や、50円玉の穴、クジラの鼻孔……。

「これは何の穴かな? 分かる人」

と尋ねると、子供達が我先にと手を挙げてくれます。

全員が同時に手を挙げたりすると、誰に当てたらいいか困ってしまいますが、そういうときは、

「じゃあ、みんなで一緒に。せーの」

と音頭を取ってあげると、子供達はみんな、嬉しそうに声をそろえて元気に答えてくれます。私はもう大人で、忘れてしまいましたが、子供はそういうのがとても楽しいようです。

最後に登場する穴は特に身近で、子供がアハハ、と笑ってくれます。