『心ってどこにあるのでしょう?』 こんのひとみ 作/いもとようこ 絵 (金の星社) 2018
「心」は小学二年生で習う漢字と定められているので、日本の小学校に通っている以上、早めに覚えないといけない言葉です。
ただ、「花」とか「上」といった具体的な言葉と違い、日本語の語彙の乏しい子に教えるには、説明が少々難しい言葉でもあります。
以前、とある国出身の三年生の子にその意味を説明したのですが、なかなか理解してくれず、翻訳機に頼り、「心」をその子の母語で提示しました。
すると、その子は眉を寄せ、
「この言葉は、先生の言ってる意味と違うと思う」
といった旨のことを言ってきました。
それで、私が翻訳機のその言葉をまた日本語に直してみると、「心臓」となりました。
どうやら私は、「心臓」という意味の単語をその子に見せながら、「『心』はこれだよ! 悲しいとか、嬉しいとか、そういった気持ちのことだよ!」と熱弁していたようです。
昨今、翻訳機はかなり正確になったと言われていますが、それは英語などメジャーな言語に限ったもので、マイナーな言語はまだまだ正確性に劣るところがあるように思うことが、この件に限らず度々です。
それで、日本語の「気持ち」「感情」「気分」といった言葉をその子の母語に翻訳して、
「こんな感じの意味だよ」
と言ってみると、まあそれなら納得できるといった顔をその子がしたので、その場はそれで良しとしました。
ただ、やはり心もとないので、後日、上記の本を読ませて聞かせました。
本の中では平易な言葉で、男の子や女の子や動物たちが、心はどこにあるか意見を言い合います。
女の子「心は胸にあると思う」
豚「いや、鼻にあると思う」
男の子「頭にあると思う」
犬「しっぽだよ」
といったやりとりを読み聞かせると、子供もくすりと笑ってくれ、心を大切にしようと最後には思える、優しい内容の絵本です。